【ジャンル:アクション】
【発売元:日本テレネット】
【発売日:1992年12月11日】
【定価:8,900円】
狂気の仮想空間に溺れる
気にはなっているけど中古相場が高めで評価が微妙な
大枚をはたくのはためらってしまうソフトが“Nintendo Switch Online”で
プレイできるとテンションが上がるよね。
今回はまさしくそんなソフトの中心にある
スーファミのサイケデリックアクション、『サイコドリーム』をレビューする。
ゲーム内容はオーソドックスな2Dアクションで、
緑やピンクのカラフルなプロテイン(パワーアップアイテム)をゲットしながら、
狂った幻想ソフト“廃都物語”に取り込まれて現実逃避に夢中な少女、
柚木沙耶香を救い出すのが目的だ。
沙耶香を救い出すために派遣されたプレイヤーキャラは、
国家公安委員会直属の公安4課、通称“ダイアモンドの犬*1”と呼ばれる
特設公務員デバッガーのシジマ・リョウとトバリ・マリアの両人だ。
リョウはマントをまとった剣士みたいな格好。
写真はトランスミューテーション(完全変体)した姿で、まるでサイボーグのようだ。
もう1人の主人公はボンデージファッションに身を包むマリア。
扇情的な姿で公務に努める彼女には賛否両論あると思うが、仮想空間だから問題なし!
前述の“廃都物語”はDムービーという実体験と同様に
仮想空間を体感できるシステムのソフトで、
そのなかでもっとも流行しもっとも危険だとされたソフトなのだ。
沙耶香は芳しくない家庭環境の抑圧から逃れるように
“廃都物語”にのめり込んでいった。
リョウとマリアの2人はこのDムービーへの耐性を高く評価され、
“ダイアモンドの犬”として活動しているらしいが、
それってネトゲ廃人みたいなもんでは?
サイコドリーム配信と聞いて、原作者とも呼べる西崎まりの氏の「美孰少女」を引っ張り出す。エログロと繊細なタッチが印象的で「廃都物語」や「ダイヤモンドの犬」などの単語は出てくるが完全に別物。マンガでなくアートな作品をエンタメにアレンジしたのがゲームと知って驚いたものです。 pic.twitter.com/CF0WM2zWWG
— ジストリアス (@zisutoriasu) 2021年2月10日
故・西崎まりの氏が描くイラストでゲームへの没入感が高まる。
また、敵キャラは総じてグロくてキモいのだが、
こいつらは現実世界に戻ろうとしない沙耶香の狂気と幻想が
産み出したものらしく、彼女には精神科の受診を強くおすすめしたい。
現実と幻想が入り乱れるDムービーの世界。これは丸ノ内線のホーム?
ステージクリア時に表示される沙耶香の一枚絵。
往年のギャルゲーを彷彿とさせる画面は、遠い童貞のノスタルジアを刺激してくれる。
だが、どのステージをクリアしても同じ絵なのは気になった。
進行度に応じてサービスショットになるとかあるでしょうよ……。
冒頭にこのような警告文が表示され、当時のソフトとしては珍しいと思ったが、
これはビデオテープ時代のOVAを意識しているらしく、粋な演出に感心させられた。
アクションゲームとしては大味。
Rボタンがダッシュというのも残念極まりない。
だが、そんなウィークポイントも薄らぐ幻想的でイっちゃってる世界観は、
一見に値する。
そして一見に値するどころか、ぜひとも刮目してほしいものがある。
ずばり、マリアのケツである!!
マリアはトランスミューテーション後、
なんのコスチュームプレイをしているかわからない90'sコスプレイヤーのような身なりになる。
これでは完全変体ならぬ、“完全変態”だ。ハイグレ! ハイグレ!
うーん、たまらんケツだねえ。
わざわざ、ドット絵の尻画像をアップにしている俺のほうが
“完全変態”な気がしないでもないが、そろそろまとめに入ろう。
本作はアクション部分を楽しむというよりも、
説明不足だからこそ考察しがいのあるストーリーの深みを楽しむゲームだ。
いちおう説明書にはプロローグだけではなくエピローグも記載されているのだが、
ゲーム中では物語の説明は皆無。
それから、『ワイルドアームズ』シリーズのコンポーザーとして知られる、
なるけみちこ氏が作曲した陰鬱なサイケミュージックも
洗脳されそうでクセになる。
日本テレネットは『夢幻戦士ヴァリス』だけではないということを示した
怪作である。
【6点】
*1:記章にはめられた美しい結晶の連想から、そう呼ばれているらしいです