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16ビットマシン円熟期のRPGへの愛がすごい!! 『Sea of Stars』をレビュー

 





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Sea of Stars | ゲームタイトル | PlayStation (日本)

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Steam:Sea of Stars

【ジャンル:RPG
【発売元:Sabotage Studio】
【発売日:Switchは2023年8月30日 PS/Xboxは2023年8月29日
Steamは2023年8月28日】
【定価:Switchは4,400円 PSは4,070円 Xbox/Steamは4,000円】

90年代のJRPGを全力でインスパイア

 言うまでもなく、『クロノ・トリガー*1』は名作である。
そして、2DRPGのひとつの到達点だろう。
本作はそんな『クロノ・トリガー』への愛がひしひしと伝わってくるRPGで、
開発はカナダのSabotage Studiosだ。

 夏至に生まれたゼイルと冬至に生まれたヴァレアが主人公。
2人とも“至点の子”と呼ばれ、運命の渦に巻き込まれていく。

 “至点の子”である2人は“至点の戦士”を養成するゼニス学院で鍛錬に明け暮れ、
太陽の力を開放したゼイルと月の力を開放したヴァレアは、
邪悪な錬金術師“フレッシュマンサー”が生み出した怪物たちから
世界を守る旅に出る。

 ゼイルとヴァレアの幼なじみ、ガール。ボーイだけどガール。
彼は“至点の子”ではない一般人だけど、脅威のコミュ力を有するナイスガイ。
ゼイルたちの軽率な行動で隻眼になってしまうが、
決して彼らを叱責したりしない心の広い若人。
上司にしたいゲームキャラにノミネート間違いなし!
俺は主人公の2人よりもガール推しだね。

 マップ上を生き生きと動き回る敵と接触するとシームレスに戦闘がはじまる。
HPがゼロになって気絶したキャラの頭上には星が飛ぶが、
この星はターンごとに減っていき、すべてなくなると復活する。
なお、星の数は気絶するごとに増えていくので一度の戦闘で
何度も気絶していると復活が難しくなる。
ピンチのときは“おやつ”を惜しまずに使おう!

 巨大ボスとの戦いは、いくら時代が変わろうともビデオゲーム
大きな見せ場である。戦闘中、敵の近くにアイコンが表示されたら注意が必要。
それは敵が特定のスキルを使ってくる予告なのだ。
指定のターン数でアイコンに対応した属性の攻撃を当てて、
すべてのアイコンを破壊すれば一時的に敵を無効化できる。
アイコンが残ってしまったとしても敵のスキルを弱体することも可能なので、
属性をよく見て戦術を練っていこう。

 ボス戦の前にセーブポイントや回復ポイントがあるのも、
あのころのRPGって感じで懐かしい。こういった設備をダンジョンの奥まで
設置してくれる親切な人がいるのだなあ。

 冒険を進めると敵に通常攻撃をヒットさせるたびに“生マナ”というものが
発生するようになり、これを吸収すると通常攻撃に属性を付与したり、
使用するスキルのダメージ量や回復量が増える。
戦闘を有利にするためにマスターは必須の要素だぞ。

 レベルアップ時は通常のステータスアップのほかに追加ボーナスも選べる。
戦闘に参加していないキャラを含め、すべてのキャラが同時にレベルアップする。
つまり経験値は全キャラ共通なのだ。キャラごとのバラつきがなく、
レベル稼ぎをする時間も最小限で済むのはありがたい。
ただ、洗練されすぎていて少し味気ないと思った。
なぜなら、俺は懐古厨だからだ。

 いろいろなところで手に入る“秘宝”は、いわゆるチート。
斬新なのは隠し要素やクリア後のおまけとしてではなく、
公認のチートモードとして実装している点。
敵から逃げるコマンドもなく、序盤のバランスがやや辛口の本作の
救済措置として機能しているので、詰まってしたときや“俺TUEEEE”を
体感したい人は使ってみるのもいいかもしれない。

 焚き火は回復ポイント兼キッチン。
料理をすれば、回復アイテムの“おやつ”をこしらえられる。
ガールは自らを“お料理戦士”と名乗るだけあって、とても料理上手。
そうそう、焚き火といえば『クロノ・トリガー』の
“緑の夢”の印象が強いんだよな。

 “おやつ”のレシピは旅先で見つかる。
パフェの語源がフランス語で完璧という意味の“Parfait”だと本作で知った。

 料理に必要な食材は店で購入する以外に
マップのに自生しているものをむしったり、敵からも入手できる。
強敵に備えて“おやつ”はたくさん準備しておこう。

 各地にある釣り場でひとときの安らぎを……。

 釣った魚はリリースするか海鮮系の食材として処理される。

ウミウシは食えるそうです。

 

 フィールド画面の雰囲気はまさに『クロノ・トリガー』。
フィールドの移動中は戦闘が発生しないのもクロノっぽい。
ちなみに光田康典*2氏は本作のゲストコンポーザーとして参加している。

イトケンのポスト。電球の音、光田氏の仕事だったのか!

 

 各エリアを探索する楽しさやちょっとした段差なら乗り越えられる快適さは、
クロノ・トリガー』以上によくできている。

 はじめて訪れた場所の地名がこういうふうに表示されるのが好き。

 “おやつ”が入っている宝箱のデザインだけピクニックバスケットになっていて、
ほかのアイテムの宝箱と差別化されているところもお気に入り。

 シンプルで奥深いミニゲーム、“ホイールズ”。
絵柄が揃えば自分の駒が動いて、相手のライフを削る。

 『クロノ・トリガー』『スーパーマリオRPG』『ガイア幻想紀』といった
1990年代のJRPGからの影響が色濃い本作だが、
それらの名作たちの安易なクローンにとどまらず、
現代に即したプレイフィールを取り入れたのは英断でしかない。

 しかし、全体のクオリティが高いだけに主人公2人に魅力がない点と、
シナリオが急展開かつ説明不足で感情移入できない点が目立つ。

ファミ通.comによる開発陣へのインタビュー。『The Messenger』もプレイするぜ!

 とはいえ、大手メーカーのタイトルを凌駕する昨今の
インディーゲームの勢いと品質には素直に感嘆してしまう。
RPGツクール』で憧れの作品をマネして再現しようとする
厨二病的な熱意が昇華すれば、本作のような非凡な作品が生まれるのだろう。
90'sビデオゲーム小僧どもには90年代の傑作RPG
最大限の敬意を込めた本作をぜひとも遊んでほしいものだ。

【8点】

 

*1:1995年3月11日にスーパーファミコンで発売されたRPG坂口博信氏、堀井雄二氏、
鳥山明氏がタッグを組んだ“ドリームプロジェクト”によって制作された。やれ!

*2:コンポーザー。『クロノ・トリガー』で作曲家デビュー。
その前は『ファイナルファンタジーⅤ』『ロマンシング サ・ガ2』『聖剣伝説2』の
効果音を担当していた