人喰いの大鷲トリコ | ゲームタイトル | PlayStation
【ジャンル:アクション】
【発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント】
【発売日:2016年12月6日】
【定価:6,900円】
ゲームで体感する神話
すこぶる雰囲気のいいゲームをつくらせたら右に出る者はいない上田文人*1氏が
7年の開発期間をかけてようやく完成させたアクションアドベンチャー、
それが本作『人喰いの大鷲トリコ』である。
ゲーム内容は主人公の少年を操り大鷲のトリコを誘導しながら協力し、
大鷲の巣からの脱出を目指すといったものだ。
上田氏は本作の以前にも少年と少女が手を繋いで
協力しながら霧の城からの脱出を図る『ICO』、
少女の魂を取り戻すために青年ワンダが16体の巨像を粉砕していく
『ワンダと巨像』の2作品を制作しており、どちらも名作以外の何ものでもない。
上田氏は本作の開発中に当時所属していたSCEを退社し、
ジェン・デザインというゲームスタジオを立ち上げた。
このロゴはそこはかとなく『ICO』を思い起こさせる。
本作の難産っぷりがうかがえる記事。
瀟洒なオープニング。シャレオツ情報誌『BRUTUS』を読んでいる層に
ハマりそうだと思っていたら、初回限定版に同梱されているブックレットは
“BRUTUS特別編集”なのね。合点!
初代プレステ時代みたいなドラマ仕立てのCM、やっぱ好きだわ。
オープニングが終わると主人公の少年が洞窟で目を覚ます。
目覚めからはじまるゲームは名作が多いというのが俺のセオリー。
こいつが噂のトリコくん。グリフォンのような姿の巨獣だ。
羽毛がもふもふで触り心地がよさそうである。
ただ、なんだかご立腹のようでいま安易にもふもふすれば、
指がムツゴロウさん*2状態になってしまうだろう。
怒っている原因は負傷なので、まずは足に刺さっている槍を抜いてあげよう!
動物王国は事実上閉鎖されているが、馬と触れ合える別の施設のムツ牧場は運営中のようだ。
ゲーム中のヒントは音声と字幕を用いて違和感なく演出に溶け込ませている。
開始5秒で気づくことだが、この声の主は主人公の少年である。
どうやらトリコくんは腹が減っているようなので、食料を調達せねばならない。
食料はそのへんに転がっている樽に入っているぞ。
中身はトリコくんが“人喰い”と呼ばれているから想像したくないね……。
餌づけして仲よくなるとトリコくんは少年のあとをついてくるようになる。
狭いところまでがんばってついてくる様子がけなげでかわいいね。
頭だけを出した状態。うん、これは萌えだ。
その巨体のわりには身軽なトリコくん。
彼(?)の頭や背中に乗って高所に運んでもらうのが攻略の要だぞ。
つぶらな瞳で少年を心配そうに見上げるトリコくんには参っちゃうね。
本作のキャッチコピーのひとつは
“思い出の中のその怪物はいつも優しい目をしていた。”だが、
本当に優しい目をしてんだね……。
ときには、少年とトリコくんが別行動を取らないといけない場所もある。
相棒のために何ができるかを考えるゲームデザインは『ICO』と共通している。
トリコくんの習性をまとめてくれている記事。
目を細めて微笑んでいるように見えるトリコくんの悠然とした佇まいは、
生命への全肯定だと感じ入った。
トリコくんのライバルキャラも登場。こいつは優しい目をしていない黒い大鷲だ。
トリコくんは少しアホなので誘導がうまくいかずイライラする場面もあったが、
出来の悪い子ほどかわいいとはよく言ったもので
そのアホさがいかにも生き物という感じがして愛着が湧いてくるのだ。
上田氏は必要最低限の要素で世界観とゲーム性を構築するのが、
非常にうまいクリエイターだと本作をプレイして再認識した。
『ICO』と『ワンダと巨像』をプレイした人もそうじゃない人も、
ゲームで味わう神話をぜひ体感してほしい。
俺はPS5でプレイしたぞ。
昨年12月に公開されたジェン・デザインの最新作のトレーラー。
上田氏のこだわりの強さゆえに最新作を遊べる日はまだまだ先になりそうだが、
10年は覚悟して待ちたい。
そのころ、俺はもうアラフィフで対応ハードはPS7とかかなあ……恐ろしい。
【9点】