宮崎駿監督もベタ褒め!!　シリーズ最高峰と名高い『機動警察パトレイバー2 the Movie』を視聴

【公開日：1993年8月7日】

俺たちの“好き”が詰まったリアルアニメの大傑作

　結論から書けば、傑作、いや大傑作だ。
前作の『機動警察パトレイバー the Movie』（以下、パト1）は
誰もが楽しめる娯楽作品になっているのに対し、本作のテーマは重厚で小難しい。
パト1では鳴りを潜めていた衒学的な要素が色濃くなり、
押井守監督の本領が発揮されている作品だ。
しかし、難しいテーマを扱った作品であっても類まれなる映像表現で
観る者を惹きつける作風であるのも事実なので、どうか毛嫌いせずに観てほしい。
俺も昔、わけもわからないくせに『人狼 JIN-ROH』を観て、
「プロテクトギア、かっけー!!」と思っていたし、押井守監督が関わった作品に
触れることでいっぱしのオタクになれると信じている、
にわかミリオタだったイタい過去を懺悔しておく。

前作の感想はこちら。

　あらすじは、2002年冬、謎の戦闘機が横浜ベイブリッジを爆破、
公には自衛隊機であったと報道され、緊迫した空気に包まれる日本。
厳戒態勢のなか、特車二課の後藤隊長はこの事件の容疑者に、
1999年のPKFで東南アジアにて行方不明になった柘植を挙げて
捜査をはじめるといったもの。

　本作は本来の主人公であるはずの野明や遊馬の影が薄く、
後藤隊長と南雲さんにフォーカスした物語である。
また、前作の犯人である帆場は自身の力を誇示するために罪を犯した
愉快犯的なキャラクターだったが、本作の犯人の柘植は立派（？）な思想犯であり、
その目的はまやかしの平和に甘んじている日本人に
世界の理不尽を認識させることだった。
そして、南雲さんと柘植は過去の同僚で、公私にわたり深い関係になった仲だ。
そのため、ポリティカル・フィクションとしてではなく、
南雲さんにひそかな好意を寄せていた後藤隊長との三つ巴の情愛が痛切な
ほろ苦い大人のラブストーリーとしての側面もある。

　パト1と比べてみるとレイバーの戦闘シーンが少なく、
ロボットアニメにしてはドンパチ感が抑えられているが、
とびきり熱いロボットアニメを所望する人は、
『天元突破グレンラガン』をご覧なさい。

　とにかく本作は、硬派なオタク第３世代の胸に刺さりまくる
珠玉のアニメ映画なのだ。セルアニメとCGの絶妙な融合、
練りに練られた作画とレイアウト、薄幸気味のヒロイン、高尚な敵役、
昼行灯だけどいざというときに強キャラになるイケオジ……。
な、最高だろう？　第３世代だけじゃなく、すべてのオタクと
映画好きにみてほしい作品だと断言する。