カサロシのログ

消化と記録(ゲーム成分多め)

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上海発、アジアンテイストの美麗ドットSFゼルダライク『Eastward』をレビュー

 





公式サイト。

 

Eastward(イーストワード) ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)

Eastward(イーストワード) を購入 | Xbox

Steam:Eastward(イーストワード)

【ジャンル:RPG
【発売元:Chucklefish】
【ダウンロード版の発売日:Switch・PCは2021年9月16日
Xboxは2022年12月1日 Switchのパッケージ版は2021年11月25日】
【ダウンロード版の定価:2,800円 パッケージ通常版の定価:4,400円
コレクターズエディションの定価:8,250円】

日本よ、これが大陸のドット絵だ。

 愛好しているシリーズ作品ではなくてもゲーム画面やトレーラーを見て、
「購入するぞ! 購入するぞ!」と息巻いてしまう作品がある。
本来であれば聞いたこともない海外メーカーの新規タイトルなんて、
敬遠しようと思うのだが本作はそうはならなかった。
理由はいちいちツボを突いてくる緻密なドット絵に一目惚れしたからである。
“ゲーム性”というゲームを語るときに、
このうえなく都合のよい言葉も圧倒的なグラフィックの前では霞んでしまうのだ。

ドット絵で細部まで描き込まれたグラフィックは息を呑む美しさ。
キャラクターの一挙手一投足が微笑ましく愛おしい。

どこかで見たような、どこかの国の景色。

ほとばしる昭和レトロ! 形骸化した町の永遠!

九龍城砦を彷彿とさせる場所。あれ? ブック●フの看板があるね……。

 本作のデベロッパーのPixpilは上海に拠点を構えるスタジオで、
パブリッシャーのChucklefishはロンドンのスタジオだ。
イギリスのリシ・スナク首相*1は「英中関係の“黄金時代”は終わった」と述べたらしいが、
ゲーム業界の英中関係は明るい見通しになりそうだと本作をプレイして感じた。

 ジャンルは『ゼルダの伝説』シリーズに相当する、
いわゆる“ゼルダライク”のアクションRPG
退廃したアジアっぽい世界を綿密なドット絵で描ききっており、
そこから漂う生活感は地球上のありとあらゆるエモさを結集させたような出来で、
感服に次ぐ感服がドット愛好家でビデオゲーム中毒者の俺を唸らせまくったのである。

主人公のジョンは炭鉱夫。ヒゲもじゃでボサボサ頭の風貌は、まるでホームをレスした人みたいだ。

子どもたちの罵言も黙って聞くジョンは、心優しい寡黙な男だ。

 主人公である炭鉱夫のジョンはある日、白髪の少女の珊と出会う。
地下世界で父娘のように暮らすジョンと珊だったが、
探索を進めるうちに世界に唯一残された列車を見つける。
その列車に飛び乗って、目の当たりにした外の世界とは――。

天真爛漫の権化、珊。鬱屈した表情のジョンとは正反対で底抜けに明るい。
調理器具でもあり武器でもあるフライパンを振るうジョンの後ろ姿からは父性が感じられる。


冒険のさなか、“もう1人の珊”と幾度となく遭遇する。はたして彼女の正体は?

ジョンに肩車される珊の図。その姿はまるで本当の父娘だ。
微笑ましい光景だが、よい子のみんなは知らない小汚いおじさん*2についていっちゃダメだぞ!

二手に分かれての謎解きも用意されていて、ほどよく頭の体操になる。

2人で協力して大便染みた地下を脱出し、世界の真実に辿り着くのだ!

 

コレクターズエディションには、サントラと珊のミニフィギュアがついてくる。
ファンなら必ずゲットすべし!

 体力の回復手段としてベッドで休むほかに、
食材を使って回復アイテムの料理をつくることができる。
ジョンの手料理はどれもうまそうで腹の虫もブレイクダンスしちまうぜ。

豊富な食材で料理の手腕を振るおう!
店ごとにロゴマークがあるのが細かいこだわりを感じられて、とてもいい!


第3次タピオカブームは遠くなりにけり。ブームに乗り遅れた俺もそろそろタピろうかな……。

料理をしたらスロットマシンのミニゲームがはじまる。
結果に応じて、料理に付加能力がプラスされる。


暑さも和らいできたが、まだまだ冷麺はいける!
ちなみに俺は酢豚のパイナップルは好きだけど、冷麺のスイカ*3は嫌いです。


 本作のリードアーティストのHong Moran氏は好きなドット絵作品として、
MOTHER2』や『MOTHER3』を挙げている。
たしかに本作はシステム部分はゼルダ、精神的な部分は『MOTHER』シリーズや
ラブデリック作品の影響を色濃く受けているんだろうなと思った。

こういうネチネチとした言い回し(褒め言葉)が『MOTHER』シリーズを想起させる。

Nintendo DREAM WEBによるHong Moran氏へのインタビュー。

 ミニゲームが随所にある本作だが、
「これはもう、ミニゲームというより“ゲーム”なのでは?」と驚いてしまう
ゲーム内RPG大地の子”は本作を語るときに、ぜひ話題にしたい要素だ。

ブラウン管の枠が昭和ゲーマーの琴線に触れる。
カセットのラベルの人は、“そして伝説へ…”の人にそっくりだけど大丈夫!?

ゲームボーイ風のグラフィックが眩しい。仲間を集めて魔王を倒すのだ!

メモリーカードは大事……。
そういえば、PSとPS2メモリーカードの管理画面に表示されるアイコンっていいよね。


大地の子”の説明書。レトロゲームの説明書を読んだときの当時のワクワク感が詰まっている内容だ。

 この“大地の子”は主人公の“きし”が倒れるとゲームオーバーで、
ゲームオーバーになると最初*4からになってしまう、なんともシビアな仕様。
だが、きちんと救済措置があるので安心してほしい。
ゲーム内ガシャポンで“ピクスボール”という
チート級のアイテムを集めることができ、魔王討伐の旅を有利に進められるのだ!

射幸心を煽るデザインが血を騒がせてくれる。
色違いやとんでもないレアキャラも隠されているので集めがいがある。


さまざまな効果のある“ピクスボール”を駆使して冒険を有利にしよう!
なお、“大地の子”はゲーム本編のストーリーとリンクしているから、
クリアすると本作への理解がいっそう深まるはずだ。

 日本のポップカルチャーへのオマージュを存分に発揮した本作で遊んでいると、
あたかも異国の地に旅立った友人と何十年かぶりに
再会したような懐かしい気持ちになる。
使い回しキャラのいない奇妙な登場人物たちとの会話が楽しく、
難度もちょうどいい理想的なアクションRPGとして、
ゼルダの横っちょに並べておきたい名作といえよう。

【9点】

 

*1:英国憲政史上初のアジア系の首相で、チャールズ3世が任命した最初の首相でもある

*2:小綺麗でもおばさんでもお兄さんでもお姉さんでもダメ

*3:ナシのほうがうれしい

*4:仲間にしたキャラと開放したポータルは引き継がれる