【ジャンル:アクションRPG】
【発売元:マーベラスAQL】
【発売日:2013年3月28日】
【定価:4,980円】
浮世離れした浮世の美しさに言葉を失う
『オーディンスフィア』や『ドラゴンズクラウン』の開発で名を馳せた
ヴァニラウェア謹製の和風アクションRPGが本作『朧村正』だ。
2009年にWiiで発売され、いまはなき『みんなのニンテンドーチャンネル』内の
“みんなのおすすめ”でゴールドという高評価を受け、
“みんなのおすすめセレクション”として廉価版も発売された。
そんな傑作ソフトに高解像度化・操作方法の再調整などを施したのが、
このVita版なのだ。
爽快なアクションと江戸時代(元禄)の情緒を折り詰め弁当のように、
これでもかと詰めたビジュアルまわりは出色の出来栄えで、
『Youは何しに日本へ?』に出てくるような日本びいきの外国人が見たら
卒倒してもおかしくない。
また、サウンドはヴァニラウェア作品のほか、
数々のゲーム音楽を制作しているベイシスケイプが担当している。
各楽曲のクオリティもさることながら、道中の曲は移動時の穏やかものと
戦闘時の激しいものの2種類があり、エンカウントすると自然に切り替わるので、
技術の高さがうかがい知れる。
旅情をそそるグラフィック。まるで浮世絵が動いているようだ。
有機ELディスプレイを採用したPCH-1000シリーズでのプレイを推奨する。
新吉原の妖艶な雰囲気。あ~れ~!
料理のグラフィックも圧巻。俺の好物であるサバ寿司もこのとおり!
水まんじゅうのぷるぷる感もすげえや! 容赦ない飯テロっぷりに腹の虫が鳴く。
敵キャラも人間・妖怪・神仏までじつに多彩。俺の推し敵は、うりざね顔で巨乳の雪女さん。
うーん、たまんねえ!
主人公は美濃国鳴神藩主の娘・百姫と記憶喪失の抜け忍・鬼助の2名からなり、
2つのシナリオが楽しめる。
百姫は飯綱陣九郎と呼ばれる剣豪の霊に取り憑かれ、
“朧流”という剣術を駆使して過酷な運命に立ち向かう。
鬼助は公儀の陰謀を知り、抜け忍になった。
そのさなかに助けた虎姫と分不相応の恋に落ちるが――。
アクションRPGではあるが、トップビューではなくサイドビューのため、
RPG要素よりアクション要素のほうが強い。
難易度はテキトーにボタンを押しているだけでも
敵をぶった斬っていける“無双”と、さまざまなアクションを臨機応変に
使いこなさなければ太刀打ちできない“修羅”があり、
さらに条件を満たすと最高難度の“死狂”を選択できるようになる。
マップ上に散在していたり敵を倒したときに手に入る“魂”と、
アイテムを使用したり食事をすると得られる“生気”を集めることで、
諸種の妖刀や名刀をつくり出せる。刀の数は、人間の煩悩の数と同じ108振り!
史実にも登場する刀を蒐集するのは、RPG的要素として機能している。
強力な刀をどんどん入手して、物語を追っていこう!
さて、ここからはDLCの『元禄怪奇譚』を紹介していくぞ。
『津奈缶猫魔稿(つなかまねこまたぞうし 通称「化猫」)』
『大根義民一揆(おおねぎみんいっき 通称「一揆」)』
『七夜祟妖魔忍伝(ななやたたりようまにんでん 通称「白蛇」)』
『角隠女地獄(つのかくしおんなじごく 通称「鬼娘」)』
以上の4つの奇談で構成されており、
本編を別の角度から補完するのに一役買っている。
もちろん、シナリオ面の充足を図るだけではなく、
ゲームとしても本編に勝るとも劣らない出来だ。
価格はいずれも500円というバーゲンプライスで、
もう、ヴァニラウェアには足を向けて寝られない。
刀が武器だった本編とは異なり、
各シナリオの主人公の特徴に合わせた攻撃方法になっているので、
新しい気持ちでプレイできるのもうれしい。
それでは、それぞれのシナリオの特色を見ていこう。
まずは先陣を切って2013年11月7日に配信された追加DLC第1弾“化猫”は、
悪い家老に謀殺された飼い主の恨みを晴らすべく、
飼い猫の三毛が化け猫になって復讐を果たすといった内容だ。
平時は殺された飼い主の姿に化けている。三毛猫柄の着物がかわいい。
戦闘中は猫のような素早い動きで敵を仕留める。
画像は人間の姿の“お恋”モードだが、猫の姿や巨大な化け猫にも变化できるぞ!
2014年1月16日に2番目のDLCとして配信された“一揆”は、
飢餓と重税に苦しむ農民たちの怒りを鎮め、
権兵衛とその仲間たちが江戸へと陳情に向かう、悲しくも勇ましい物語である。
竹槍や鎌で忍者と戦う姿を見れば、
誰もがサンソフトのあの迷作を思い出すことだろう。
流行り病で亡くなった権兵衛の妻・お妙。夫を支えるけなげな姿に萌え~(死語?)。
3番目のDLCとして2014年7月10日に配信された“白蛇”は、
抜け忍の嵐丸が刺客との戦いで社に祭られていた神鏡を割ってしまい、
社の主である白蛇の化身に祟られ、神罰を受けることになるという話だ。
白蛇の神力で敵を一掃しよう!
最後のDLCとして2014年11月20日に配信された“鬼娘”は、
寺から脱走してきた坊主崩れで放蕩者の清吉が、
成り行きで鬼の女児である羅邪鬼に好いていると
勘違いされることからはじまる、しっちゃかめっちゃかの異文化ラブコメだ。
画像の“子供”モードは鉞で連続攻撃を繰り出せる。
ほかにも、金棒でリーチの長い攻撃を得意とする“大人”モードと
一定時間ではあるが無敵になれる“大鬼”モードがある。鬼の力を集めてクリアを目指そう!
空前の長文レビューになってしまったが、
ここまで読んでくれた御仁にとっておきのものを進ぜよう。
そう、『朧村正』といえば、温泉である! 秘湯の湯煙に浮かぶ女体! これこそ、本作の真面目だ。
変幻自在の術が使える狐や狸になれたなら、俺も巨乳ケモ耳美女に变化して、
あんな夢やこんな夢をみんな叶えたい。
こ、この果報者がー!! 方言は我が国の宝である。「だべ」は純情可憐の象徴である。
正体が白蛇なだけあって、ハンパない美白だ。
羅邪鬼の成長した姿を見た清吉の股間は、
春の土手に生えたツクシのようにひょっこりと隆起したのだ。
DLCを全編購入して、ここまでやり込んだゲームははじめてだった。
それだけ、本作に惚れてしまった。移動が少し面倒なことと、
バトルを重視しているからか地形がやや単調で退屈な点はウィークポイントだが、
それは取るに足らない言いがかりのようなものだ。
日本の魅力を世界にアピールするにはうってつけの
傑作和風アクションゲームである。
【9点】