手巻き寿司って、そんなにうまいもんかねえ?
寿司は日本の国民食であり、訪日外国人にも人気のメニューだ。
俺も1ヵ月程度なら毎日食べたとしても飽きないくらいには寿司好きである。
だが、手巻き寿司に対しては腹が立つ。
ここでいう巻き寿司とは巻きすを使い、
きちんと巻かれた太巻きや細巻きではなく、
文字どおり手で巻かれた円錐形の“花束手巻き”のことを差す。
では、手巻き寿司を忌避している理由を以下にまとめよう。
- ひとくちで食べられず、噛んだ跡が見苦しい
- 素人が手で巻いただけだから、握り寿司や巻き寿司にあるシャリとネタの一体感が乏しい
- “飯炊き3年握り8年”という言葉があるくらい繊細な寿司を家庭で手軽に再現するのは、寿司職人を侮辱しているように感じる
- 義父が海苔を撒き散らす
- 義父が醤油をこぼす
以前は義父によく回転寿司に連れていってもらったが、
コロナの影響で自粛を余儀なくされた結果、
家庭で寿司を喫するために手巻き寿司の回数が増えた。
我が家は妻ではなく義父が料理を担当しているので、
「手巻き寿司は寿司職人への冒涜です。二度と出さないでください」などと
言えるはずもなく、義父が寝入ったころに妻にこっそりと小言を並べるのが
関の山であるが、そのあとに待っているのは夫婦間を流れる険悪なムードだ。
握り寿司こそ寿司の花形だと思っていたが、
調べてみると寿司のなかでは歴史は浅く、握り寿司を中心とした江戸前寿司の
初出文献は1829年(文政12年)刊の『誹風柳多留』という川柳の句集である。
そもそも、寿司の起源は東南アジアの山地民の魚肉保存食だというのだから、
もう少し視野を広げ、手巻き寿司を許すこともできるはずなのだ。
次に手巻き寿司が配膳された日には穏やかな心で迎え入れ、
手巻き寿司のあとの妻とのわだかまりを避けたいところだ。