【ジャンル:パズル】
【発売元:任天堂】
【発売日:1989年6月14日】
【定価:2,600円】
“テトリスハイ”になったことがあるかい?
ソ連のコンピュータ技術者であった
アレクセイ・パジトノフ氏(以下、パジやん)が開発した落ち物パズルの
原点にして頂点といえる作品、それが『テトリス』である。
音声認識の研究者としてソ連科学アカデミー(現ロシア科学アカデミー)で
勤務していたパジやんとその同志は本業が終わったあと、
サイドプロジェクトとしてゲーム開発に精を出していた。
ソ連のプログラマの多くは鉄のカーテンをすり抜けてやってきた
『パックマン』などの西側諸国のゲームを模倣しようと躍起になっていたが、
パジやんと同志の2人はチームを組み、オリジナルゲームの開発を決起した。
仲間たちとアイデアを出し合うなかでパジやんは子どものころに
よく遊んでいた『ペントミノ』という知育玩具から着想を得て、
ついに『テトリス』を誕生させたのだ。
オリジナル版はソ連のマイコン、エレクトロニカ60で開発・動作したもので、
最初に移植されたのはIBM製のコンピュータであった。
その後はさまざまなプラットフォームにアレンジ移植されて、
いまもなお現役でゲーム業界の一端を盛り上げている。
さて、『テトリス』自体のルーツを駆け足気味にたどったところで、
本題であるゲームボーイ版のレビューをしていこう。
日本で『テトリス』といえば本作だという意見には、
よほどのあまのじゃくでない限り、おおむね賛同いただけるかと思う。
それもそのはず、本作は単体*1としてはゲームボーイ史上国内出荷本数1位の
約424万本を記録。通信ケーブルを使った対戦モードも好評を博し、
ゲームボーイブームの起爆剤になった。
ゲームモードは前述の対戦モードのほかにも1人でプレイできるモードが
2つある。ひたすらテトリミノを消していく“A-TYPE”と、
あらかじめブロックが配置されたフィールドで
規定数のテトリミノを消していく“B-TYPE”だ。
BGMは3曲から選べるのだが、
このうちの1曲は初期ロットと後期ロットで収録されている曲が違う。
ほとんどの人の耳に慣れ親しんでいるのは、おそらく後期ロットで聴ける
ロシア民謡“コロブチカ”だろう。初期ロットで聴ける曲、“メヌエット”は
任天堂のオリジナル曲らしい。
初期ロットと後期ロットの見分けかただが、
カートリッジのラベルの刻印で判別できる。刻印が数字だけなら初期ロットで、
数字とアルファベットであれば後期ロットなのだ。
ゲームボーイ版テトリスの9-5をクリアした時に現れるデモのロケットはNASAのスペースシャトルではなくソ連のブランであるということを知ったのは大人になってからだった。確かにソビエトのゲームだし9-4はソユーズだし言われてみればなんだよな。 pic.twitter.com/aRw1bw3xLY
— さらしる (@sarasiru) 2017年12月17日
ハイスコアを取ると特別なデモが見られる。こんなところにも米ソ宇宙開発競争の熾烈さが!?
複雑怪奇な権利関係もテトリスを語るうえで避けられない話題だ。
この記事には貴重なオリジナル版の『テトリス』の画像が掲載されている。
2022年2月24日、ロシアはウクライナへ侵攻した。
現在も被害が拡大しており、ウクライナ難民は1000万人を超えている。
プーチン大統領には『テトリス』のキャッチコピー、
“ロシアより愛をこめて”および“ロシアより楽しさをこめて”という言葉を
噛みしめてほしい。そして、ロシアから娯楽の灯が消えるような愚行を
一刻も早くやめていただきたいと一介のブロガーである俺は切願している。
【9点】
*1:さすがに2つのバージョンを合わせた数の『ポケットモンスター 赤・緑』と比べると
少ない。ポケモンは驚異の約822万本