【公開日:1995年12月23日】
1粒で3度おいしい
本作は「彼女の想いで」「最臭兵器」「大砲の街」の3作品からなる
オムニバス・アニメ映画だ。総監督と「大砲の街」の監督は大友克洋氏で、
ほかの2作品の監督にはそれぞれ別人を据えている。
そのため3作品とも毛色が違い、最後まで驚嘆させられる出来映えだった。
それでは、各作品をざっくりと紹介していこう。
「彼女の想いで」は、宇宙ゴミを処理している作業員たちが宇宙船“コロナ”にて
救難信号を受信したところから物語がはじまる。向かった先は“サルガッソー”と
呼ばれる宇宙船の墓場だった。そこで救難信号の発信源であるバラの形状をした
遭難船に進入するハインツ(CV:磯部勉)とミゲル(CV:山寺宏一)は、
船内で不可解な現象に出くわす。SFホラーといった感じの内容だ。
原作の同名マンガをベースとしているが、設定や登場人物は大幅に
アレンジされているらしい。監督はSTUDIO4℃の創立メンバーである森本晃司氏。
余談だが作中に登場する天使の像を模したロボットが、
PSの賛否両論RPG『PAL 神犬伝説*1』に出てくる敵キャラと
似ていると思ったけど、共感してくれる人は日本に5人くらいしかいないだろう。
「最臭兵器」は、山梨県甲府市にある製薬会社の研究所で勤務する
主人公・田中信男(CV:堀秀行)が風邪をこじらせながらも出勤し、
所長の部屋にある極秘の化学兵器を風邪薬と勘違いして誤飲してしまい、
その化学兵器の作用で信男の体から強烈な臭気が発せられ、
てんやわんやしてしまうパニックコメディだ。
俺は3作品のなかでは、これが1番好き。
このクオリティでおバカなことをやり通しているのが最高すぎる!
『老人Z』のノリが好きな人は絶対に気に入るはずだ。
本作で監督デビューを果たした岡村天斎氏は、
PS版の『テイルズ オブ ファンタジア』と『テイルズ オブ デスティニー』の
オープニングアニメーション監督なども手がけている。
本日、なぜか『最臭兵器』が話題になっていたので久しぶりに鑑賞。このアニメは1995年に公開されたオムニバス映画『MEMORIES』(大友克洋製作総指揮)の中の一作で、手描き作画の魅力が全面に満ち溢れ、特に「異臭を放つ主人公が自衛隊から総攻撃を食らうシーン」の迫力は今観ても素晴らしい。 pic.twitter.com/PflomFr6Jy
— タイプ・あ~る (@hitasuraeiga) 2020年2月21日
信男が出前機を搭載したカブをパクり、
自衛隊の攻撃を避けながら中央自動車道を疾駆するシーンは、みんな大好きなのである。
『老人Z』の感想はこちら。
「大砲の街」は、砲台だらけの街で暮らす家族の日常を海外の絵本のような
タッチで描いた作品だ。主人公の少年(CV:林勇)は砲撃手を夢見ており、
その父親(CV:キートン山田)は無口な装填手でこつこつと職務にあたる
毎日を送っている。本作の1番の特徴は、全編をワンカットで構成している点だ。
ワンカットでありながらカメラワークに趣向を凝らしているので、
退屈に感じることはない。
また、本作はのちに制作されたスチームパンク冒険活劇『スチームボーイ』の
原点になったとかなっていないとか……。
オムニバスアニメ『MEMORIES』の中の1作『大砲の街』は、CGがまだ普及していない時代に「手描きのセルアニメ」&「フィルム撮影」という状況で「全編をワンカットで描く」という難題に挑んだ意欲的な作品だ。監督:大友克洋、技術設計:片渕須直など豪華なスタッフも特徴。カメラワークがすごい! pic.twitter.com/4vemaGD0A4
— タイプ・あ~る (@hitasuraeiga) 2020年2月25日
セル画の色味を見ると興奮する。
セルアニメ全盛期のベクトルの違う3作品が一挙に楽しめる
満足度の高い映画だった。大友ファンはもちろん、そうじゃない人にも
聴視必至と薦めたくなる作品なのだ。